■ 近年100年間の全世界の地震災害の歴史(マウスオーバーで拡大)

フェーズフリー誕生の背景

身近で小さなものから、大きく複雑な社会的なものまで、世の中にはさまざまな課題が存在している。それらの課題に対して、これまで数々のアイデアや取り組みが生まれ、その解決に貢献してきた。健常者にも障がいを持つ人にも便利に使えるものをデザインする「ユニバーサルデザイン」、また発展途上国において地域格差や不当労働などを改善し自立を促進する「フェアトレード」や、今や社会で当たり前のものとして取り入れられている「エコ」など、それらは社会が抱える大きな問題を解決するものとして受け入れられている。
そして、現在も明確な解決に至っていない社会課題の一つに挙げられるのが「防災に取り組めない」ことである。今も継続的に地震や大雨をはじめ、さまざまな災害が世界中で発生し続けており、これからも、それらがなくなることはない。
2011年の東日本大震災を機に、日本全国で防災意識は高まった。防災用品の売り場は増え、災害対応に関する報道や書籍等も増加した。しかしその重要性は理解しながらも、具体的な備えへの行動にはなかなか移せないのが現状である。なぜなら日々の生活に追われ、「何をどのくらい備えればよいのか分からない」「非常時にしか役立たない防災用品にコストをかけられない」と、防災は取り組みづらいこととなっているからだ。そして備えができていないままに、再び被害が繰り返されていく。これこそが、私たちの社会が抱え続ける「防災に取り組めない」という課題が解決に至らない要因である。そして、その問題を解決するための新しい考え方として「フェーズフリー」は生まれた。

フェーズフリーの考え方

フェーズフリー品

日用品は主に日常時のみに利用し、非常時には本来の機能の発揮や生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)への提案をできないものが多い。一方の防災用品は、ほとんどの場合ふだんはしまっていて、非常時のみに取り出して利用する。しかしフェーズフリー品は、日常時の生活で便利に利用できるのはもちろん、非常時の際にも役立てることができるという特長を持っている。ふだん身のまわりにあり愛着を持って利用している商品やサービスをそのまま非常時にも利用でき、安全や安心を叶えてくれるのがフェーズフリーなのである。

フェーズフリーデザインが実現する社会

フェーズフリーデザインが実現する社会

フェーズフリーは、フェーズフリーデザインによって具現化される。それは「日常時にも非常時にも価値を発揮してQOLを 確保する商品やサービスを実現するデザイン」である。
一般的な商品・サービスは、主に日常時に利用されるように考えられている。そのため、災害などが発生した非常時のフェーズになると、とたんにその価値を失い使用できなくなってしまうものがほとんどである。防災用品は、ふだんしまわれたままで利用することができず、いざという時にのみ取り出して使うという特殊性を持っている。
一方のフェーズフリーな商品・サービスは、日常時は便利で役に立ち、非常時においては日常時と同様の価値、または非常時ならではの新たな価値を提供する。それによってふだんの生活で使用している商品やサービスを変わることなく活用することができ、QOLを確保し続けることができるのである。
ふだん使用している商品やサービスを、どのような状況下においても利用できることで、困難だった備えを日々のなかで意識しなくてすむようになる。身のまわりのあらゆる商品やサービスがフェーズフリーになれば、非常時においてもQOLを確保でき、さらには大切な命を守ることにつながるのである。
生みだされたフェーズフリーデザインは、また次のアイデアへと繋がり、新たな価値が限りなく生まれていく。また一つひとつの商品やサービスでは解決することができない災害に対して、身のまわりのさまざまなものがフェーズフリーになることによって全体として解決していくという創発性を持ち解決していくことになる。
このサイトでは、フェーズフリーデザインの参考事例を紹介し、理解や認知を促進することで日常時でも非常時でも安心で豊かに暮らせる社会、つまり、社会全体的な災害対応力を向上させた“フェーズフリーな世の中” を実現することを目的としている。